こんにちは、早稲田情報局の齋藤です。
皆さんは「パチンコ」や「パチスロ」という言葉を聞いて、どんなイメージを持ちますか?レジャーとして楽しむ人がいる一方で、法律や規制、あるいは依存症といった社会的な側面を思い浮かべる方も多いかもしれません。実は、日本のこの巨大な遊技機産業が健全に運営されるよう、警察庁の管轄下で「試験」を行う非常に重要な役割を担っている団体があります。
今回お邪魔したのは、一般社団法人GLI Japan。世界中のカジノ機器試験で90%以上のシェアを誇るアメリカの「GLI」を母体とし、日本における遊技機の型式試験を行う指定試験機関です 。
取材で伺ったのは「残業代は1分単位」「月平均残業時間は4時間未満」という驚くべきホワイトな環境と、2030年のIR(統合型リゾート)開業を見据えたダイナミックなビジョンでした 。
今回は、現場を率いる横山代表理事、人事総務を統括する平井総務局長、人事担当の浅利氏にお話を伺いました。

警察庁に代わって「遊びのルール」を守るプロ集団
齋藤: 本日はよろしくお願いいたします。まずは、GLI Japanがどのような役割を担っている団体なのか、詳しく教えていただけますか。
平井さん(以下、敬称略): よろしくお願いします。一言で言えば、私たちは国家公安委員会から認定を受けた「指定試験機関」として、パチンコやパチスロなどの遊技機が、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)に則って正しく作られているかを試験する業務を行っています 。
齋藤: 警察庁の代わりに試験を行っている、ということでしょうか。
平井: そうですね。厳密には公安委員会の委託を受けて試験しているということになりますが、所轄は警察庁になります 。風営法では、遊技機が「射幸心(しゃこうしん)をあおりすぎないこと」を厳格に定めています 。例えば、出玉率が法律の範囲内に収まっているか。ギャンブル依存症などの社会問題に繋がらないよう、メーカー様が作った新機種がルールを守っているかを、一機種ずつ丁寧にチェックするのが私たちの仕事です 。
齋藤: 私の友人もパチンコで苦労していたことがあり、その重要性は身に染みて分かります。試験というのは、どれくらいの数が行われているのですか。
平井: 業界全体では、昨年実績で年間3,000件近くの試験が行われました。弊社はそのうち1,200件を担当しており、日々メーカー様から持ち込まれる新機種の型式試験を行っています 。実は、この試験をパスして実際に市場に出るのは非常に難しく、昨年の適合率(合格率)はおよそ2割ほどでした 。
齋藤:2割! ほとんどが落ちてしまうのですね。
平井: メーカー様も法律の限界ギリギリを攻めて開発してこられますから、そこはまさに「せめぎ合い」です 。私たちが厳格に試験を行うことで、初めて日本の遊技機文化の健全性が保たれていると言えます 。
米大統領選の投票機も試験する、世界基準の技術力
齋藤: 「GLI」という名前には、どのような由来があるのでしょうか。
横山さん(以下、敬称略): これはアメリカの「Gaming Laboratories International(ゲーミング・ラボラトリーズ・インターナショナル)」の略称です 。世界30拠点以上に展開しており、グローバルではカジノ機器の試験で9割以上のシェアを持っています 。
齋藤: 世界最大のシェアを持っているのですね。カジノ以外にも何かされているのでしょうか。
横山: 実は、アメリカの大統領選挙で使われる「電子投票機」の試験も行っているんですよ 。外部からプログラムを書き換えられて、票が操作されないか。私たちの持つ高度なセキュリティ技術や不正防止のノウハウが、民主主義の根幹を守る場面でも活かされています 。
齋藤: そんなスケールの大きな技術が、日本での試験にも活かされているとは驚きました。なぜ日本へ参入されたのですか。
横山: 日本にはカジノはありませんが、約16兆円規模と言われるパチンコ・パチスロという巨大な市場があります 。また、2030年に向けて大阪でのIR開業も正式に決まりました 。日本で唯一、カジノ機器試験のグローバルな知見を持っているのが私たちです。将来的に日本でカジノが健全に広がっていくための、一翼を担いたいと考えて参入しました 。

横山達也代表理事
「定着率93%」の裏側にある、驚きのホワイト環境
齋藤: 職員の皆さんは「みなし公務員」という立場になると伺いました 。やはり職場はかなり厳格な雰囲気なのでしょうか。
浅利さん(以下、敬称略): 実はそんなことはなくて、むしろ非常に自由でフラットな雰囲気ですよ 。服装や髪色も自由ですし、20代から30代が職員の60%以上を占めているので、上下関係もそれほど厳しくありません 。
齋藤: 浅利さんは、なぜGLI Japanを選ばれたのですか。
浅利: 正直に言うと、「働きやすさ」に惹かれたからです 。前職は保険会社の営業でしたが、休日出勤や深夜対応が多くて……。団体職員ならプライベートを大切にできるのではないかと考えたんです 。実際に入ってみて、その居心地の良さは本物でした 。
齋藤: 具体的に、どのような環境なのですか。
平井: まず、残業がほぼありません。全職員の平均で、月間で4時間未満。さらに有給休暇の取得率もほぼ100%です 。残業が発生した場合も、1分単位で手当を支給しています 。
齋藤: 月間4時間未満……! それは学生からしても、理想的なワークライフバランスですね。
平井: 職員の8割以上が理系のエンジニアなのですが、文系が多い会社のような「大きな声で活気を見せる」という雰囲気ではなく、皆さん落ち着いて、粛々と、かつ着実に業務に取り組んでいます 。その居心地の良さもあってか、2024年以降に入社した新卒社員の定着率は約93%に達しています 。

左:TOKYOパパ育業促進企業認定、中央:ホワイト企業認定

ユースエール企業認定
求めるのは、スキル以上に「明日を良くしたい」というマインド
齋藤: 採用についても伺わせてください。新卒採用では、どのような学生に来てほしいと考えていらっしゃいますか。
平井: 私たちの試験業務には、法律で定められた資格要件があります。具体的には「電子・電気・機械・情報・通信工学」に関する学科を卒業していることが条件となります 。理系の基礎知識があることは前提になりますが、それ以上に私たちが重視しているのは「マインド」の部分です 。
齋藤: 技術力よりも、マインドですか。
平井: はい。ポテンシャルを活かすためにも、「今日よりも明日を良くしたい」「自分を高めていきたい」という意欲があるかどうかが重要です 。また、試験はチームで行いますし、メーカー様への説明も必要になるため、基本的なコミュニケーション能力もしっかり見ています 。
齋藤: 逆に、入社後に大変なことはありますか。
平井: 一人前の試験員として独立して仕事ができるようになるまで、大体一年程度のトレーニング期間を設けています 。教育制度やOJTはきっちりしていますが、そこを乗り越えるまでは覚えることも多く、粘り強さが必要ですね 。ただ、ジョブ型的な評価制度を採用しているので、やる気とスキルがあれば、若いうちからリーダーなどの重要なポジションに抜擢されるチャンスは十分にあります 。

2030年、日本のエンターテインメントの未来を創る
齋藤: 最後に、これからのGLI Japanの展望についてお聞かせください。
横山: 業界で「GLIが試験した台なら安心だ」と言っていただけるような、絶対的な信頼を勝ち取ることが目標です 。知名度はまだこれからですが、メーカー様、警察庁、そして遊技を楽しむユーザー様すべてに対して、安心を提供できる存在であり続けたいと思っています 。
齋藤: カジノ(IR)への関わりも、やはり大きな柱になるのでしょうか。
横山: もちろん、私たちの最大の強みです。2030年に日本初のカジノが誕生する際、健全な運営を支える「インフラ」としての役割を、他社にはないグローバルな経験を活かして担っていきたいと考えています。パチンコ業界の現状を守るだけでなく、将来的にはeスポーツの公平性や信頼性を確保するための試験や、電子投票機のような新しいテクノロジーによる社会課題の解決など、私たちの可能性は無限に広がっています 。現在、新会社を設立し、日々準備を進めています。
齋藤: 日本のエンターテインメントの未来を、技術と信頼で支える。非常に誇りの持てる仕事だと感じました。本日はありがとうございました。
取材を終えて
「指定試験機関」と聞くと、どこか遠い世界の組織のように思えるかもしれません。しかし、取材を通じて見えてきたのは、私たちの身近にある「遊び」の裏側で、徹底的に不正を排除し、安全を守り抜こうとするエンジニアたちの誠実な姿でした。
圧倒的なホワイト環境で腰を据えながら、同時に世界レベルの技術に触れ、日本の新しい産業の立ち上げにも関わることができる。安定と挑戦がこれほど高いレベルで両立している環境は、そう多くはありません。
「理系の知識を活かして、社会に確かな安心を届けたい」。そんな志を持つ学生にとって、GLI Japanは唯一無二のキャリアを築ける場所になるはずです。
