
こんにちは、文学部4年のN.Hです。
「バイト、してないんだよね」
この一言、大学生活のなかでたまにすごく重く響くときがある。バイト先での話題が飛び交う食堂、週4勤務が当たり前の空気、そして「生活費どうしてるの?」「ヒマじゃないの?」という、悪気のない一言たち。気づけば、「バイトしてない=怠けてる」という見方がどこかにあるような気がしてしまう。
でも実際、バイトしていない早稲田生は少なくない。体感では3〜4人に1人は、少なくとも一度もバイトをしていないまま2年、3年と進級している。そしてその背景を聞いてみると、単なる「働きたくない」ではなく、それぞれに理由と選択がある。
都内の実家から通っていて、家計的にも時間的にも無理をする必要がなかった人。資格試験や留学準備、学内プロジェクトや長期インターンに集中していた人。あるいは、体調やメンタルの問題で、定期的に働くこと自体がストレスになるという人もいた。
バイトをしないことは、何もしていないことではない。むしろその時間を「何に使っているか」がそれぞれにあり、話を聞けば聞くほど、「これはこれで、ものすごく濃い大学生活だ」と感じさせられる。
ある人は、毎日図書館で専門書と格闘していた。ある人は、自分の創作活動に全振りして月に一度ZINEを出していた。ある人は、オンラインで仕事を受けて、フリーランスのように記事を書いたり、動画編集をしたりしていた。肩書きとしては「アルバイトなし」でも、手を動かしている時間とエネルギーは、むしろ多かったりする。
なかには、バイトをしていないことにずっと引け目を感じていたという人もいた。「働いていない自分」が、どこかで“劣っている”ように感じて、無理やり就活やTOEICの勉強に励んだこともあった。でも時間が経つと、「自分なりに積み上げた時間の使い方に、自信を持っていい」と思えるようになったと言っていた。
大学生活に“正解”なんてない。稼ぐことが正義でもなければ、働かないことが怠慢でもない。大事なのは、その時間をどう使ったか。その時間に自分で納得できるかどうか、ただそれだけだ。
バイトをしない選択は、ある意味では勇気がいる。社会との接点が減ることもあるし、まわりの“当たり前”に逆らうことでもある。でもそのぶん、自分自身と向き合う時間を持てたり、自分なりのペースで学びや表現を深められたりする強さもある。
「バイトしてないから、何も話せない」なんてことはない。その時間に何を考え、何をしていたか。それをちゃんと伝えられれば、面接でも日常でも、自分らしい言葉になる。
お金を生み出さなかった時間が、未来の自分の土台になっていることもある。
焦ることがあってもいい。でも、「やらない」選択をした自分を、必要以上に責める必要はない。誰かの基準ではなく、自分の納得を基準にしていい。
今の早稲田には、いろんな過ごし方がある。週5で働いてる人も、まったく働いていない人も、どちらにも価値があるし、どちらも“ちゃんと大学生活してる”。
「バイトしてないのに忙しいんだよね」
それは、今日をちゃんと生きてる人の、なによりリアルな言葉だと思う。