───早稲田で友人をつくるために必要だった「きっかけ」の話
大学生活を振り返る時期になった今、あらためて感じていることがある。
「あの時、あと一歩だけ勇気を出せていたら、もっと人とつながれたかもしれない」
文学部4年の筆者は、学生生活の大半を「顔見知りは多いが、深く話す相手は少ない」状態で過ごしてきた。連絡先は交換している。授業では会話も交わす。だが、昼食に誘い合う仲にはなれない。そんな微妙な距離感が、かえって孤独を深める瞬間があった。
だからこそ、偶然にも人とのつながりが生まれた場を、今では鮮明に思い出す。
「自然と仲良くなれた場所」には、いくつかの共通点がある
どんな場であっても、次の3つの条件が揃っていると、人との距離はぐっと縮まりやすいことに気がついた。
- 役割や目的が明確で、会話が“必要”になる構造がある
- 「顔を合わせ続ける」ことで、無理のない関係が育つ
- “ガチすぎない”ゆるやかな空気が漂っている
この3要素が揃っていた場所では、筆者のように「踏み出せない」学生でも、自然と誰かと関係を築けた。以下、その具体例を授業・サークル・イベントという3つの切り口から紹介していきたい。
授業編|意外と侮れない、グループワークとリアクションペーパー
「授業で友達なんてできない」と思っていたが、実際は“会話が前提となる構造”の授業では、不思議と人間関係が生まれていた。
実践型・グループワーク中心の講義(PBL系)
学際科目や教職科目、ゼミナール導入などに多く見られるこの形式では、発言や共同作業が求められる。自然とLINEを交換し、課題を一緒に進める中で雑談が始まる。「同じスライドをつくった相手」とは、なぜかその後も関係が続いた。
リアクションペーパーの共有がある授業
文構・文・教育系の授業で見られる形式。授業内で共有されるリアクションペーパーが、会話の糸口になることがある。書いた内容を通して、「あれ、もしかしてあなたが書いた?」というやり取りが自然と生まれた。
ワークショップ型の演習・表現科目
演劇や創作系など、身体や感情を使うタイプの授業では、「無言でいること」の方が浮く。共同作業を重ねるうちに照れも消え、気づけば親しい関係になっていた。
サークル編|“入っただけ”ではなく、“関わり方”で差が出る
サークルに所属しても、居場所になるとは限らない。馴染めなかった人の体験談には、ある種の共通点がある。
- 既に人間関係が出来上がっていて新入りが入りづらい
- 活動頻度が極端で、関係性が続かない
- ノリが合わず、場にいても孤独を感じる
では、逆に「自然と友達ができた」サークルには、どのような特徴があったのか。
プロジェクト型サークル(学生団体・地域活動・メディア系など)
“活動が目的”であるため、関係が自然と生まれる。役割分担やタスク共有の中で、会話が生まれ、LINE交換があり、雑談へとつながっていく。
少人数・趣味特化型サークル
映画、文学、ボードゲームなど、テーマが明確で話題が定まっているため、初対面でも会話がしやすい。また、毎週ではなく「たまに集まる」スタイルが、人との距離を適度に保ちやすい。
学部横断・学年混在型サークル
キャンパスや学年を超えて交流できるため、「ここでしか会えない人」に出会える。縦のつながりができやすく、1年から入っても孤立しにくい。
こうしたサークルであれば、活動の中で「自然とつながる」構造が備わっており、気づけば安心できる居場所となっていることが多い。
イベント編|“つながりの設計”が優れていた、もうひとつの出会いの場
授業でもサークルでもないが、人との出会いが多く、かつ深い関係になりやすいのが「イベント型」の場だった。
学内ボランティア・プロジェクト参加
地域と連携した活動や、展示補助、短期プロジェクトなど。共通の目的があり、参加者も初対面同士が多いため、場の空気がフラット。SlackやLINEでのやり取りが継続することで、その後も関係が続くことが多い。
趣味ベースの“ゆる企画”
読書会、ワセメシ会、履修交換会など、SNSで立ち上がる一時的なイベント。少人数・趣味共通・短期完結という構造が、人との距離を適切に保ちながら、親しみを育む場となっている。
サークル新歓の“体験会フェーズ”
実は、サークル本体よりも「説明会」「体験会」の時期に出会った人との方が、関係が続くことがある。軽い雑談、ちょっとした交流から「とりあえずLINE交換」までが、無理なく進むのがこの時期の特徴だ。
早稲田祭の運営サイド
「祭りの裏側」は、作業ベースの会話が前提になる分、気負わず話せる。準備の合間の会話、チームでのやりとりなどが、気づけば深いつながりへと発展することもある。
“ぼっち気味”だったからこそ見えた、人との距離の詰め方
早稲田大学は、自由度が高く、多様な人々が集う場所だ。だからこそ、孤独になりやすい構造も同時に抱えている。筆者自身、「一人でいることが多かった」からこそ、つながりが自然に生まれた場のありがたみを実感している。
つながるためには、大げさな努力や“キャラ変更”は必要ない。ただ、「会話が自然に発生する構造」のある場所に、少しだけ自分を置いてみる。その小さな一歩だけで、大学生活は驚くほど変わる。
最後に
誰かと出会うというのは、勇気だけでなく、環境の力にも大きく支えられている。
今回紹介したような“つながりやすい構造”のある場を知っているだけで、人との距離を縮めるきっかけは確実に増える。
「誰かと話したいけど、どう始めたらいいかわからない」
そんなときこそ、授業、サークル、イベントを“場所”ではなく“きっかけの場”として見直してみてほしい。
それが、孤独ではない学生生活への第一歩になるかもしれない。