「え、大学どこなんですか?」
このセリフ、たぶん人生で100回くらい聞かれると思ってたけど、
そのうち5回くらいは、言った瞬間に空気がバグる。
早稲田に入って、最初の頃は正直ちょっと誇らしかった。
「早稲田です」って言うと、「すごいじゃん!」って返されるのが定番で、
そのたびにちょっとだけ“勝ちパターン”を感じてた。
でも、あれって、相手と状況によっては、マジで地雷になることがある。
ある日の飲み会。
共通の友達を通じて知り合った人たちと、渋谷の個室居酒屋。
男女半々くらいで、わりとちゃんとした空気だった。
「じゃあ、みんなで軽く自己紹介しよっか〜」みたいな流れで、
住んでる場所、趣味、バイト先、最後に「どこの大学?」って順番でまわってきた。
そのとき、4番手くらいだった俺に回ってきた「大学どこ?」の問いに、
いつもの感じで「早稲田です」って答えた。
その瞬間、一瞬だけ空気が止まったのを、今でも覚えてる。
たぶん、他の人たちがMARCHだった。
青学、法政、中央あたり。明治がいなかったのが逆に痛かったかもしれない。
そしてその中に、なぜか早稲田が1人だけポツンといた。
別にマウントを取ったつもりなんて一切ない。
「早稲田です」って、ただ情報を伝えただけだったのに、
言った直後から微妙な“フォロータイム”が始まった。
「え〜すごい!絶対頭いいじゃん〜!」(※言い方が軽い)
「やっぱり…しゃべり方に知性あるもんね(笑)」(※なぜか笑いにされてる)
「え、早稲田ってどこにあるんだっけ?」(※絶対知ってるよねそれ)
完全に“いじられキャラ化”してた。
そこからしばらくは、何を言っても「さすが早稲田〜」がついてくる。
「バイト?マックです」「え〜意外!もっと外資インターンとかしてそう〜」
「趣味?サウナ」「やっぱ整えるのも高学歴(笑)」
最初は笑ってたけど、だんだん何を言っても“早稲田フィルター”がかかってしまう空気に疲れてきた。
それが嫌で、あるとき別の飲み会では「都内の大学です」って濁してみた。
でも、意外とそれはそれでややこしかった。
「え、どこ?てかなんで濁すの?」「早稲田でしょ?」って言われて、
結局バレて、「やっぱり〜」の流れになった。
もう逃げ場はないんだと思った。
たぶん、相手が学歴をどう捉えてるかによって、
「大学どこ?」っていう質問の“意味”が変わるんだと思う。
・純粋な興味で聞く人
・マウント探知機として聞く人
・話題のネタとして聞く人
で、早稲田って名前は、想像以上に重たい。
かといって、「○○大学です」って“自分の名前を言う”感覚で名乗るのをやめたくもない。
だから最近は、もう開き直ってこう言ってる。
「早稲田です。でも、ぜんっぜん頭良くないです。普通に、課題やって、寝てるだけの大学生です」
謙遜っていうより、“普通の人間宣言”。
たまに「いや〜絶対ウソだ〜」って言われるけど、それはもう仕方ない。
それ言われたら、「じゃあ中退するね」って返して、ちょっと笑い取るようにしてる。
ほんとは、大学名なんて、仲良くなってからでよくない?って思ってる。
でもこの国では、就活でも、合コンでも、Uberの登録でも、「大学どこ?」が情報の最初になる。
だったらせめて、その名前に飲まれない自分でいたいなと思う。
“早稲田の人”じゃなくて、“俺”としてちゃんとしゃべること。
それができてたら、大学名ってただの背景になる気がしてる。
とはいえ、また週末に飲み会がある。
たぶんまた聞かれる。「大学どこ?」って。
そのときも、いつものトーンで言うつもりだ。
「早稲田です。焼き鳥が好きな大学生です」って。
誰がどこを見てようと、自分の話くらい、自分の言葉で始めたい。