ねぇ、誰か早く言ってよ。
夜のロータリー、マジで地獄だって。
大学入って、1ヶ月目。
早稲田生活にもだいぶ慣れてきて、「高田馬場もわりと歩けるようになったな〜」って油断してた。
その夜は、サークルの新歓飲みがあって、
1年の子たち何人かで「もう少し話たいね」ってなって、
「じゃあロータリー行こっか!」って、軽い気持ちで足を踏み入れた。
──後悔した。
最初に目に飛び込んできたのは、ゲロ。
割と堂々と、駅前のタイルの真ん中に、オレンジ色のそれが鎮座してた。
囲いもないし、シートもないし、なんなら人通りの多いゾーン。
誰も気づかないふりして避けて通ってた。
そこからもう、空気が変だった。
道の隅っこには、倒れた自転車、ぐしゃっと潰れた空き缶、割れた瓶。
「今日、なんかイベントあったっけ?」って思うレベルで、地面が“昨日じゃない”感じだった。
そして、極めつけは、ネズミ。
3匹いた。いや、最初は1匹だと思ってたんだけど、
「動いてる…!」って思ってガン見してたら、そこにもう1匹いて、
しかもその2匹、普通にロータリーの真ん中を駆け抜けていった。
で、横からもう1匹出てきて、計3匹のネズミが“トライアングルフォーメーション”で行進。
私、絶句。
駅のライトがやけに黄色くて、
酔っ払いが地面に座り込んでて、
誰かがスマホで笑ってて、
その横に落ちてたの、たぶん焼き鳥の串。
あと、なぜか音楽鳴ってた。どこから?ってくらいの爆音。
スピーカー持ち歩いてる人、都市伝説じゃなかったんだね。
周りの先輩たちは、めっちゃ平然としてた。
「うわ〜今日もカオスだね〜」って笑ってて、
「駅前っていつもこんな感じだよ〜」って普通に言われた。
いや、カオスとかじゃなくて、災害。
ていうか、“日常の顔をした非常事態”みたいな、新ジャンルのホラー。
しかも、途中で見かけたカップルがキスしてたんだけど、
その背後にゲロあったからね?
世界観、どうなってるの。
その日はもう、そのまま電車乗って帰ったんだけど、
頭の中、ロータリーの残像が離れなかった。
ネズミのフォーメーションも、焼き鳥の串も、瓶の破片も。
「早稲田って自由な大学なんだよ」って先輩が言ってたけど、
自由の末路がこれ?怖くない??
次の日、昼間に同じ場所を通ったら、めっちゃ平和だった。
チラシ配ってる人がいて、カフェの香りしてて、ハトしかいなかった。
夜のことが、夢だったみたいに。
でも私は知ってる。
夜のロータリーは、笑顔で裏切ってくる。
ということで、これから早稲田に来る1年生のみなさん。
夜の馬場ロー、覚悟してください。
人が変わります。ネズミも出ます。
地面は見て歩いてください。
そして、深夜テンションの爆音Bluetoothスピーカーからは、なぜか懐メロが流れています。
あの日の私に伝えたい。
“ロータリーは話す場所じゃない。心の準備をしてから行け。”