「国際ビジネスコンテストを運営する学生団体」と聞くと、少しハードルが高そうに感じる人もいるかもしれない。けれど、OVAL Japanの話を聞いてみると、そこにあるのは“ビジネスを学ぶ場所”というだけではなかった。日本・中国・韓国の学生が一緒にビジコンをつくり上げ、ときには英語で連絡を取り合い、ときには現地の友人を頼って海外へ遊びに行く。そんな、想像以上に濃い国際交流の場が広がっている。今回はOVAL Japan代表の小川さんに、普段の活動や団体の雰囲気、そしてOVALならではの魅力について話を聞いた。
「ガチそう」で終わらせるにはもったいない団体
OVAL Japanは、日本・中国・韓国の3か国に拠点を持つ国際学生団体「OVAL」の日本支部だ。主な活動は、日中韓の学生が参加するビジネスコンテストの企画・運営。参加者がビジネスアイデアを考え、メンターや審査員、企業関係者と関わりながら形にしていく、その大きな舞台を学生自身の手でつくっている。
と聞くと、「ビジネスに詳しくないと無理そう」「かなり意識高い人だけが集まっていそう」と感じる人もいるかもしれない。実際、取材した私自身も、1年生の頃に新歓でOVAL Japanの存在を知ったとき、「海外にも行くし、日中韓でビジコンってかなりガチそうだな」と思って少し身構えていた。
けれど今回、小川さんの話を聞いて印象が変わった。もちろん、活動にはしっかりとした責任感がある。企業とのやり取りもあれば、大きなイベントの運営もある。けれどその根っこにあるのは、「ビジネスを学びたい」「海外の学生と関わりたい」「大学生活で何かにちゃんと打ち込みたい」という学生たちの自然な好奇心だった。
早稲田生も多く集まる、国際色豊かなインカレ団体
OVAL全体では、OVAL Japan、OVAL China、OVAL Koreaの3団体を合わせて約150人が所属している。OVAL Japan単体では取材時点で67人ほど。ビジネスコンテストにスタッフとして関わる人数は、3か国合わせて90人ほどになる。
OVAL Japanは早稲田大学の単独サークルではないが、早稲田生の存在感はかなり大きい。所属大学の割合は、早稲田が約4割、上智が約3割、慶應と東大がそれぞれ約1割、そのほかの大学が約1割ほど。早稲田生にとっても、かなり身近なインカレ団体だと言えそうだ。
男女比は体感で女子の方が多く、6:4から7:3ほど。日本だけでなく、中国・韓国の拠点でも女子メンバーが多いそうだ。さらにOVAL Japan内にも韓国人メンバーが多く、取材時点では体感で3割ほどが韓国人メンバーとのこと。ミーティング中には日本語だけでなく、英語、韓国語、中国語が自然に飛び交う。日本にいながら、かなり多国籍な環境に身を置けるのもOVAL Japanの大きな特徴だ。
木曜夜のミーティングから、ビジコンの舞台は動き出す
OVAL Japanの定例ミーティングは、毎週木曜日の19時から21時まで。場所は東京大学。早稲田生が多いなら早稲田でやってもよさそうだが、もともと東大から始まった団体という歴史を大切にし、現在も東大で対面ミーティングを続けているという。
活動頻度は、週1回の対面ミーティングに加えて、各局ごとに週1〜2回ほどオンラインミーティングが入ることもある。さらに2週間に1回ほど、日中韓の各拠点で進捗を共有するオンラインミーティングも行われる。普段の活動は、8月に開催される国際ビジネスコンテストに向けた準備が中心だ。
とはいえ、ビジコンだけを淡々と準備しているわけではない。協賛企業と連携したイベントや企業訪問などもあり、過去にはAIを使った動画生成に関するイベントも開催したという。企業と関わりながら企画をつくる機会があるのは、ビジネス系の学生団体ならではの面白さだ。
「運営」と一言で言っても、関わり方はかなり幅広い。
OVAL Japanには、ケース局、PD局、PG局、FR局、HR局という5つの局がある。ケース局は、ビジコンのテーマ設定や参加者のメンタリング、ビジネスアイデアを考えるための知識整理などを担当する。PD局はSNS運用やバナー、ロゴウォール、OVALのTシャツやパーカーなど、広報・デザインまわりを担う。PG局は当日の進行やイベント設計を担当し、FR局は企業への営業や協賛金の獲得、審査員・スピーカーの手配などを行う。HR局は新歓の面接や人事、参加者へのメール対応、フォーム作成など、組織を裏側から支える役割だ。
その上に総務局があり、代表・副代表・財務を中心に全体の進捗を見ていく。ビジコンという一つのイベントをつくるために、企画、営業、広報、人事、当日運営がそれぞれ動いている。ある意味、小さな会社のような動き方を学生だけで経験できる団体でもある。
ビジコンを「運営する側」だけで終わらない
OVAL Japanの1年はかなり濃い。4月から5月は新歓時期で、5月中旬ごろに新メンバーが合流する。その後、5月末には8月の本番に向けた国内選考会があり、6月にはOB・OG会、8月にはメインとなる国際ビジネスコンテストが行われる。
この国際ビジネスコンテストは、日中韓でローテーション開催されている。取材時点では、今年は日本開催、来年は韓国・ソウルでの開催が予定されているとのこと。8月の本番が終わると、10月には代替わりの選挙が行われ、新しい役職が決まる。11月には秋の新歓、12月にはクリスマスパーティーなどの親睦イベントもあり、3月にはSEPというスタッフのみのビジネスコンテストが開催される。
このSEPが少し面白い。OVAL Japanはビジコンを運営する団体だが、運営するだけでは参加者の気持ちはわからない。だからこそ、スタッフ自身もビジネスアイデアを考える側に回り、参加者目線を体験する機会をつくっているのだという。
OVALの一番の魅力は、海外に“ちゃんと友達ができる”こと
ビジネスについて学べることは、もちろんOVAL Japanの大きな魅力だ。企業と関わる機会もあり、イベント運営の経験も積める。卒業生の中には、起業家として活躍している人もいるという。
ただ、小川さんが「入ってよかった」と強く感じているのは、ビジネス以上に、中国や韓国に友達ができることだという。
もともとOVAL Japanに入る前は、中国人や韓国人の友達はほとんどいなかったそうだ。しかし、ビジコンを通じて日中韓の学生と一緒に過ごすうちに、海外に友人ができていった。小川さんは、最近韓国に行った際、宿を取らずに1週間滞在したという。現地にOVALの友人がいて泊めてくれたり、毎日のように違う友人とご飯に行ったりしたそうだ。
「日本にいるよりお金がかからないくらいでした」と笑いながら話す小川さんの言葉からは、OVALでできるつながりが、ただの“国際交流”という言葉では収まらないものだと伝わってきた。
SNSを開くと、韓国語や中国語で書かれた友人のストーリーが流れてくる。何が書いてあるか全部はわからなくても、「全然違う場所に住んでいる友達がいる」という感覚が日常の中にある。それは、大学の授業や旅行だけではなかなか得られない距離感かもしれない。
小川さんは、中国や韓国に対するイメージも変わったと話す。ニュースやネットの情報だけで見るのではなく、実際にその国の友人と話し、一緒に過ごすことで、相手の国を“人”として見られるようになる。日中韓は文化的に近い部分もある一方で、まったく違う部分も多い。その違いを、頭で理解するだけでなく、友達との関係の中で自然に感じられるのがOVALの面白さだ。
英語が完璧じゃなくても、話そうとする気持ちが大事
日中韓のメンバーと関わる以上、英語を使う場面も多い。日本国内のミーティングは日本語が中心だが、海外拠点とのオンラインミーティングやテキストでの連絡は基本的に英語になる。1週間のビジコン本番では、中国・韓国の学生と寝泊まりしながら過ごすため、ずっと英語でコミュニケーションを取る場面もあるという。
小川さんは、それを「プチ留学みたいな感じ」と表現していた。短い期間でも、英語を使わざるを得ない環境に身を置くことで、実践的な英語力はかなり伸びるそうだ。
もちろん、ある程度の英語力は必要になる。小川さんの感覚では、英検準1級程度の力があると活動しやすいとのこと。ただし、それが絶対条件というわけではなく、実際にはそのレベルに満たないメンバーもいるという。
大事なのは、「自分から英語を話そうとする意欲」。完璧に話せるかどうかよりも、伝えようとする姿勢があるかどうか。国際交流に興味があるけれど英語に自信がない、という学生にとっても、挑戦する価値のある環境だと感じた。
1年半だからこそ、密度の濃い大学生活になる
OVAL Japanの活動期間は、4月に入会してから翌年10月に引退するまでの約1年半。一般的なサークルと比べると、かなり短く感じるかもしれない。小川さん自身も「すごく短い」と話していた。
しかし、その短さがあるからこそ、メンバーはしっかりコミットして活動している。毎週のミーティング、局ごとの準備、日中韓でのやり取り、国内選考会、本番の国際ビジコン、そしてスタッフ同士のビジコン。1年半の中に、普通の大学生活ではなかなか経験できないことが詰まっている。
さらに、OVAL Japanを卒業した後に中国や韓国へ留学し、そのままOVAL ChinaやOVAL Koreaに入るメンバーもいるという。実際に、OVAL Japan出身者が海外拠点で活動を続けるケースもあるそうだ。日本の団体に所属して終わりではなく、国を越えて関係が続いていくのもOVALらしい。
早稲田生にとっても、OVAL Japanはかなり魅力的な選択肢だと思う。ビジネスに興味がある人、英語を実際に使う環境に飛び込みたい人、中国や韓国の学生と深く関わってみたい人、イベント運営や企業営業、広報デザインに挑戦してみたい人。どれか一つでも引っかかるなら、OVAL Japanで過ごす1年半は、かなり濃いものになるはずだ。
「国際ビジネスコンテストの運営団体」という言葉だけでは、OVAL Japanの魅力は少し伝わりきらない。そこには、ビジネスを学ぶ時間があり、英語で必死に伝える時間があり、海の向こうに友達ができる瞬間がある。
早稲田の外に出て、けれど早稲田生も多くいる場所で、日中韓の学生と一緒に何かをつくる。大学生活の中でそんな経験をしてみたい人にとって、OVAL Japanはきっと、思っている以上に大きな入口になる。
