遠くからでも聞こえてくる太鼓の音。マイクを通さなくても、空気ごと震わせるような音圧。早稲田の和太鼓サークル「魁響」は、そんな和太鼓ならではの迫力を舞台で届けるサークルだ。とはいえ、メンバーの大半は初心者からのスタート。普段は和気あいあいとした雰囲気で、いざ本番になると一気に空気が変わる。そのギャップこそが、魁響の大きな魅力かもしれない。今回は、早稲田祭や単独公演を中心に活動する魁響のリアルな姿を紹介していく。

普段の姿からは想像できない、舞台上の迫力
和太鼓と聞くと、少し特別な経験がある人たちが集まっているイメージを持つ人もいるかもしれない。小さい頃から太鼓を習っていた人、地域のお祭りで演奏していた人、音楽経験が豊富な人。なんとなく、そんな人たちの世界に見える。
けれど、魁響は少し違う。メンバーの大半は初心者からのスタートだという。太鼓は、叩けば誰でも音が鳴る。もちろん、本当にかっこよく見せるには練習が必要だが、最初の一歩を踏み出しやすい楽器でもある。だからこそ、「やったことはないけど、舞台を見て音圧が忘れられなかった」「なんとなく面白そうだった」という入り方でも、自然に輪の中に入っていける。
魁響の魅力としてまず出てくるのが、普段の和気あいあいとした雰囲気と、舞台上での姿のギャップだ。練習中や普段の関係性はかなり仲が良く、アットホームな空気がある。一方で、舞台に立つと一気に表情が変わる。音、動き、掛け声、全員の呼吸がそろった瞬間、見ている側の空気まで変わる。
和太鼓は、マイクを通さなくても響く。振動や音量がそのまま身体に伝わってくる。遠くで演奏していても音が聞こえるほどの存在感があり、1つのステージの中で、その場全体を自分たちの空気に染め上げられる。これは、和太鼓ならではの強さだと思う。
真剣さと楽しさの切り替えが大事
魁響の活動は、学生会館を中心に行われている。太鼓はどうしても場所を取るため、練習環境を確保するだけでも簡単ではない。週に1回の正規練習を軸にしつつ、学生会館では週4回ほど活動の機会がある。
週に1回の正規練習にはプロの講師を招いている。初心者が多いとはいえ、舞台で見せる演奏にはしっかりとした完成度が求められる。だからこそ、ただ楽しく叩くだけではなく、真剣に練習する時間も大切にしている。
魁響の空気感を表すなら、「楽しく、でも本番には真剣に」という言葉が近い。普段は仲が良く、話しやすい雰囲気がありつつも、舞台に向けては切り替える。演奏を見に来てくれたお客さんが喜んでくれたときの達成感はかなり大きいという。
和太鼓は、一人で完結するものではない。自分の音だけでなく、隣の人の音、全体のリズム、舞台上の空気を感じながら演奏する。だからこそ、メンバー同士の関係性も大事になる。魁響では、同じサークル内のコミュニティが強く、まったく来ないメンバーがほとんどいないほど、参加率も高い。
「少人数だからこそ」のアットホーム感
魁響の人数は、1学年15人ほどで、3学年合わせて45人前後。大規模サークルのように何百人もいるわけではない。その分、メンバー同士の距離が近く、アットホームな雰囲気が生まれやすい。
サークル選びで「人数が多すぎると埋もれそう」「ちゃんと仲良くなれる場所がいい」と感じている新入生にとって、この規模感はかなり魅力的かもしれない。実際、魁響に入る理由としても、人数が少ないからこそのあたたかさや、雰囲気の良さが挙げられている。
仲の良さが深まるきっかけとして大きいのが、年2回の合宿だ。夏合宿は2泊、春合宿は1泊で毎年行われる。普段の練習だけでは見えない一面が見えたり、学年を越えて話す時間が増えたりすることで、一気に距離が縮まる。合宿を通して仲良くなった、という声もあり、夏の合宿は特に1年生が少し距離が遠い先輩とも仲良くなることのできるチャンスだ。
サークル全体のイベントとしては、合宿のほかに運動会も大きな行事になっている。和太鼓の練習や舞台だけでなく、メンバー同士で楽しむ時間もしっかりあるのが、魁響らしいところ。
早稲田祭、単独公演。舞台があるから頑張れる
魁響の活動の中心には、年間を通して決まっているステージがある。コンテストに出ることを否定しているわけではないが、魁響の主軸は、早稲田祭やおはら祭、単独公演などのイベント出演だ。
4月には新歓活動が始まり、ウェルカムパフォーマンスや今年は早慶レガッタにも客演として呼ばれるなど様々な形で新入生に演奏を届ける。5月に新入生が入ってきて、夏には合宿。9月頃からは早稲田祭に向けて本格的に準備が進んでいく。11月の早稲田祭を経て、12月には大隈講堂で単独公演が行われる。最上級生である3年生は、この単独公演をもって引退するという。
大隈講堂での単独公演は、早稲田生にとっても特別な響きがある。あの場所で、自分たちの音を届ける。3年間の集大成として、舞台に立つ。想像するだけでも、かなり熱い。
出演の場は早稲田内にとどまらない。おはら祭、オープンキャンパス、RIDE、地球感謝祭、自動車教習所のお祭りなど、外部イベントに呼ばれることもある。稲門会など、早稲田に関わる場で演奏する機会もあるようだ。
ただ練習するだけではなく、ちゃんと見てもらえる舞台がある。お客さんの反応が返ってくる。演奏が終わったあとに拍手をもらえる。そうした経験が積み重なることで、魁響の活動は単なる趣味以上のものになっていく。

初心者でも始めやすい。でも、続けるほど身体に残る
和太鼓の面白さは、入り口のわかりやすさと、続けるほど深まる奥行きにある。
最初は「叩けば音が鳴るから簡単そう」と思うかもしれない。実際、初心者でも始めやすいのは間違いない。けれど、舞台でかっこよく見せるには、リズム感、フォーム、体力、表現力が必要になる。音を出すだけならできる。でも、人に届く演奏にするには、練習がいる。
そして、和太鼓は思っている以上に身体を使う。特に腕は太鼓をしているときは常に使っているので、太鼓をやりだして半袖ピチピチになるというメンバーもいるそう。
腕や肩まわりをしっかり使うため、続けているうちに身体つきが変わってくる人もいるのかもしれない。
音楽系でありながら、かなり身体的。文化系のようで、実は体育会的な一面もある。魁響は、その両方を楽しめるサークルだ。

「なんとなく気になる」から始めてもいい
新歓期にサークルを探していると、「経験者じゃないと厳しそう」「今から始めても遅いかな」と感じることがある。特に音楽系やパフォーマンス系のサークルは、初心者にとって少し入りづらく見えることもある。
でも、魁響は大半が初心者から始めている。だから、最初から上手い必要はない。太鼓を叩いたことがなくても、楽譜が読めなくても、舞台に立った経験がなくても、まずは音を出してみるところから始められる。
それでいて、活動はしっかりしている。プロの講師のもとで練習し、早稲田祭や大隈講堂での単独公演に向けて本気で仕上げていく。普段は楽しく、舞台では真剣に。その切り替えを楽しめる人にとって、魁響はかなり居心地のいい場所に違いないだろう。
大学生活で、何か一つ「自分たちでつくり上げた」と言えるものがほしい人。音で空気が変わる瞬間を味わってみたい人。大人数すぎない、でもちゃんと熱量のあるサークルに入りたい人。
遠くまで響く太鼓の音に、少しでも心が動いたなら。魁響のステージを一度見てみると、思っていたより深く、その音が記憶に残るかもしれない。
