早稲田大学ハワイ民族舞踊研究会、通称「ワセフラ」は、フラを通してハワイの文化に触れるパフォーマンスサークルです。メンバーの8割以上がダンス未経験からのスタート。それでも、早稲田祭や単独公演、さらにはハワイでのステージを目指して練習を重ねています。
華やかな舞台の裏側にあるのは、穏やかで優しいメンバーたちと、想像以上に奥深いフラの世界。今回はワセフラのメンバーである宮川さんへの取材をもとに、ワセフラで過ごす大学生活をのぞいてみました。
ゆったりした音楽の中で、物語を踊る
早稲田大学ハワイ民族舞踊研究会は、ハワイの伝統舞踊であるフラに取り組む、オール早稲田のサークルです。通称は「ワセフラ」。1年生から3年生までの67人が所属し、文学部や文化構想学部の学生が比較的多いそうです。
フラというと、南国らしい衣装や、ゆっくりとした手の動きを思い浮かべる人が多いかもしれません。
フラの振り付けには、一つひとつ意味があります。たとえば波や花を表す動きがあり、その連なりによってハワイ語の歌詞を伝えていきます。衣装の色や柄にも意味があり、踊りながらハワイの自然や歴史に思いをはせることができるのだとか。
「踊りを見れば、歌詞がわかるようになる」
ただ振りを覚えて音楽に合わせるのではなく、曲の背景を理解し、それを体全体で表現する。そこに、ほかのダンスとは違うフラならではの面白さがあります。
舞台に向けて積み重ねる
普段の活動は、火曜と金曜の週2回。4・5限の時間帯を使って練習しています。
1・2年生は基本的に週2回の練習で活動できますが、出演する曲が増える3年生は、追加で練習することもあります。公演ごとにセットリストが変わり、合計で、覚える曲数が30曲から50曲ほどに及ぶこともあるそうです。
ワセフラの一年は、さまざまなステージとともに進んでいきます。
4月の新歓期には、RIDEへの出演や新歓公演、説明会、体験会を実施。5月末から6月初めには、2・3年生が出演する夏の単独公演があります。8月には早稲田大学のオープンキャンパスで行われるステージ企画に出演し、夏休みには全国各地の稲門会で踊る機会もあります。
9月の夏合宿を終えると、次に待っているのは早稲田祭。前夜祭に出演することもあり、11月中旬以降には3年生の引退公演となる単独公演を迎えます。
なかでも、この最後の単独公演にかける思いは特別です。一年間の集大成であると同時に、一緒に活動してきた3年生と立つ最後の舞台。メンバーにとって、強い思い入れのある公演になっています。
早稲田を飛び出し、福島からハワイまで
ワセフラの活動場所は、早稲田のキャンパス内だけにとどまりません。
2月には福島県のスパリゾートハワイアンズで、全国の学生が集まるフラダンスの大会に参加します。400人以上の学生が集まる大きな舞台で、ワセフラの副幹事長が実行委員長を担うなど、出演だけでなく運営にも深く関わっています。
さらに3月には、ハワイで開催されるホノルルフェスティバルにも出演。大学で始めたフラを、本場ハワイのステージで披露できる機会があります。
普段の練習から早稲田祭、全国の学生が集まる大会、そしてハワイへ。ひとつのサークルに所属しながら、さまざまな場所で舞台に立てることも、ワセフラならではの魅力です。
8割以上が未経験。だから最初の一歩を踏み出しやすい
これだけ多くの舞台に出演していると、経験者ばかりが集まるサークルのように感じるかもしれません。
ところが、現在のメンバーのうち、入会前にダンス経験があった人は全体の2割ほど。フラを経験していた人に限れば、わずか2、3人だったそうです。8割以上が、ダンスそのものをほとんど経験したことのない状態から始めています。
新入生がワセフラを知るきっかけとして大きいのが、Instagram。投稿の内容やアカウント全体から伝わる雰囲気に惹かれ、説明会や体験会を訪れる人が多いといいます。
最初からフラに詳しかったわけではなく、「大学ではパフォーマンスサークルに入ってみたい」と考えて体験会に参加し、そこでメンバーの空気に触れて入会を決めた人も少なくありません。
技術や経験よりも、「実際に行ってみたら居心地がよかった」という感覚が、ワセフラへの入口になっています。
穏やかだけれど、舞台には本気
宮川さんの話の中で何度も登場したのが、「優しい」「穏やか」という言葉でした。
ワセフラには、ふわふわとした柔らかい雰囲気の人が多く、練習中はにぎやかで、みんなでわいわい過ごすことも多いそうです。宮川さんが一番の魅力として挙げたのも、踊りやステージの規模より、まずメンバーの人柄でした。
「人のために頑張ろうと思える人がそろっている」
自分がうまく踊ることだけではなく、一緒に舞台に立つ仲間のために練習する。引退公演に強い思い入れが生まれるのも、日々の活動を通して築かれた関係があるからなのでしょう。
一方で、穏やかな雰囲気だからといって、活動が軽いわけではありません。ステージごとに異なる曲を覚え、振り付けの意味や曲の背景を理解し、全員で動きをそろえる必要があります。3年生になれば出演曲も増え、イベントや単独公演の運営にも関わります。
華やかな衣装を着て笑顔で踊る舞台の裏には、地道な練習と準備があります。それでも続けられるのは、一緒に頑張りたいと思える仲間がいるから。ワセフラの優しさは、単に居心地がよいというだけではなく、舞台をつくる力にもなっています。
気づけば、フラの世界に沼っていく
ワセフラに入った時点で、ハワイの文化や歴史に詳しい必要はありません。メンバーの多くは、体験会で雰囲気に惹かれ、フラをほとんど知らない状態から活動を始めています。
それでも練習を重ねるうちに、振り付けが歌詞を表していることを知り、衣装に込められた意味を知り、曲の背景にある自然や歴史を考えるようになる。最初は「楽しそう」「雰囲気が好き」という気持ちだった人も、少しずつフラそのものに夢中になっていくそうです。
宮川さんの言葉を借りれば、「だんだん沼っていく」。
落ち着いた音楽に合わせて踊ってみたい人、大学から新しい表現に挑戦したい人、大人数のサークルでも温かい関係を築きたい人。そんな学生にとって、ワセフラは無理なく一歩を踏み出せる場所になりそうです。
体験会で感じた穏やかな空気の先には、早稲田祭の舞台も、全国の学生との出会いも、ハワイの文化に触れる時間も待っています。
